Interview
【第10回料理レシピ本大賞<料理部門>入賞】『和食屋がこっそり教えるずるいほどに旨い鶏むねおかず』編集者インタビュー
主婦の友社が2022年11月に出版した『和食屋がこっそり教えるずるいほどに旨い鶏むねおかず』(笠原将弘著)が、9月12日に発表された「第10回 料理レシピ本大賞」の<料理部門>にて入賞を受賞しました。本作の編集担当であり、またこれまで数多くの料理本の編集を手掛けてきた主婦の友社 澤藤 さやかさんに、本作について、また自身の書籍制作との向き合い方などを伺いました。
和食屋がこっそり教えるずるいほどに旨い鶏むねおかず
著者 笠原将弘 著
発売日 2022/11/17
ISBN 9784074529896
判型・ページ数 B5 ・ 96ページ
定価 1,496円(税込)
主婦の友社 第10回料理レシピ本大賞<料理部門>入賞 特集ページ
● 編集者プロフィール
澤藤 さやか
(株)主婦の友社
書籍出版事業部 書籍出版部
『和食屋がこっそり教えるずるいほどに旨い鶏むねおかず』はどのような本ですか。
テレビでもお馴染みの笠原さんによる鶏むね肉料理だけを紹介する本で、66品のレシピに加え、買い方、扱い方、保存方法など、むね肉のすべてを語りつくしていただきました。2022年11月17日に出版して1週間後に重版がかかり、現在でも多くの方にご愛読いただいています。笠原将弘さんはご実家が焼き鳥屋さんだったこともあり、鶏肉への愛は人一倍。これまで多くの料理家さんや人気料理人の方とお仕事をしてきましたが、鶏肉料理の仕上がりの美しさやレパートリーの多さは、笠原さんが図抜けていると感じていました。それもあって「鶏むねだけで1冊本を作ってみませんか?」とお声がけをさせていただきました。
なぜ「鶏むね肉」を取り上げようと思われたのですか。
2022年、食材の価格が秋ごろから軒並み上昇するだろうと言われはじめた中で、安価な鶏むね肉の需要はさらに高まるのでは、と感じていました。むね肉は高たんぱく低脂質なので、体づくりをしている人や健康志向の方に人気の高い食材です。一方でパサつきがちで扱い方が難しい、料理のバリエーションが少ない、味が淡泊で飽きやすいなど、苦手意識を持つ人も多く、敬遠されがちな食材でもあります。多くの方に鶏むね肉を好きになってもらえる本を作るなら今だ!と、笠原さん×鶏むね肉をテーマに、企画提案を決めました。
著者の笠原将弘さんについての印象をお聞かせください。
10年以上前にお会いした頃と変わらず、強い芯と信念を持ち続けておられる方だと思います。ご自身の美学を持ち、ユーモアもたっぷりです。一流料理人としての風をふかせて他をよせつけない空気を作るというようなことは一切しません。町の定食屋さんや地方にある小さなお店が大好きだったり、 「和食料理人にそんなことまでやらせるの⁉」と半ばあきれながらも、読者が求める時短や手抜きのワザを惜しげもなく教えてくださったり。今年6月から開始されたYouTubeチャンネルは、あっという間に登録者数30万人を超える人気ぶり。女性だけではなく男性の視聴者も多いんです。コメント欄には、“笠原さんの料理や考え方が好きです”という言葉が多く見られ、料理はもちろん、生き方や考え方もしっかり響いているのだと改めて感じました。
料理本の魅力を教えてください。
美味しいものにはエネルギーや栄養補給だけでなく、人生の彩りという側面も。料理を作ったり振る舞ったり味わったりすることで、小さくとも手軽に、そして比較的スピーディに幸せを感じることができます。だから毎日でなくても食事を充実させる術を知っているということは、だいぶ人生お得なんじゃないかと思うんです。時代に合った「いま食べたい!」をかなえる食コンテンツで、だれかの暮らしに小さな彩りを添えるお手伝いができればいいな。そういう思いで日々取り組んでいます。
仕事の中で大事にされていることは何ですか。
相手への想像力を忘れないようにしています。例えばスタッフさんへのメール、特に修正依頼などは相手がどんなふうに言葉を受け取るかをシミュレーションした上で送信するように心がけています。上司に教えてもらった大切な心掛けです。急ぎのときはなかなか実行できていないのが現状ではありますが……。また1冊の本を作る上では、著者以外にも、カメラマン、デザイナー、スタイリスト、そして社内の制作、販売、宣伝等、多くの人たちが携わっています。なので、完成した本は“みんなの作品”です。関係した方々の気持ちに報いるためにも1人でも多くの方に手に取ってもらわねばなりませんので、自分が納得できる、そしてその本がどんな状況になっても最後まで愛したおせるものしか作りたくないと思って臨んでいます。私のこだわりや急な方向転換などでご迷惑をおかけしてしまうことも多々ありますが、仕事の恩は仕事で返すという思いを貫いていきます。
書籍編集のお仕事についてどうお考えですか。
書籍や雑誌を通して、信頼できる情報や本物の写真や文章に触れる経験は、次の世代に繋いでいくべき大切な文化です。自分が書籍編集者という立場でいられる今は、ほどよく広く、そしてだれかの心に深く残り続けるものを作りたいので、「まずは手にとれ、そして手にした人の心に刺され!」と願いながら、タイトル、見出し、写真セレクト等、小さなしかけを本に埋め込む気持ちで、ページ作りに励んでいます。書籍制作は極めて地味な作業ですが、これからも熱い気持ちをもって取り組んでいきたいと思います。
最後に
笠原さんの新刊『和食屋が教える、旨すぎる一汁一飯 汁とめし』を10月2日に発売しました。今回の本では、近所で手軽に買える食材や冷蔵庫の残り物で旨い一食を作る“究極の2品献立”を提案。料理経験あるなし問わず、誰でも旨い一食が作れるようになります。ぜひ、お手に取ってみてください。
和食屋が教える、旨すぎる一汁一飯 汁とめし
著者 笠原将弘 著
発売日 2023/10/02
ISBN 9784074555161
判型・ページ数 A5 ・ 136ページ
定価 1,540円(税込)